システムを欺いたのは誰か——ETC判例に見る“信頼”の構造

法律×キャラ解説

「ぽんちゃんの遠出」

ぽんちゃんは、久しぶりに車で遠出することにした。

目的地は、大学時代の友人が住む岐阜県の山間部。

紅葉が見頃で、温泉もある。

仕事に追われる日々の中で、ぽんちゃんは「ちょっとだけ、現実から離れたい」と思っていた。

ただ、問題がひとつ。

ぽんちゃんの車にはETCカードがない。

高速道路を使うには、現金払いしかないが、料金所で止まるのが面倒だし、割引も効かない。

「たろうくん、ETCカード貸してくれない?

ぽんちゃんは、親しい友人のたろうくんにLINEを送った。たろうくんは快く了承した。

「いいよ。俺のカード、使って。車載器に挿すだけだから。」

ぽんちゃんは、たろうくんのカードを受け取り、自分の車に挿した。

車載器は問題なく認識し、料金所もスムーズに通過できた。

「便利だなあ、ETCって。」

ぽんちゃんは、紅葉を眺めながら、快適なドライブを楽しんだ。温泉につかり、地元の料理を味わい、心も体もリフレッシュされた。

しかし、数週間後——

たろうくんのもとに、警察から連絡が入った。

「あなた名義のETCカードが、他人の車で使用された形跡があります。これは電子計算機使用詐欺の可能性があります。」

たろうくんは驚いた。ぽんちゃんに貸しただけなのに、なぜ犯罪になるのか?

ぽんちゃんも呼び出され、事情聴取を受けた。

「え、たろうくんの許可があったんですよ?それってダメなんですか?」

ぽんちゃんの言葉に、捜査官は静かに答えた。

「問題は、システムが“たろうくんの車”だと誤認したことです。」

判例解説:大阪地裁令和7年1月14日判決

ETCカードを借りて使っただけで、なぜ詐欺罪になるのか?

1. 問題となった行為

ぽんちゃんは、友人たろうくんのETCカードを借りて、自分の車で高速道路を通過しました。

たろうくんの同意はありましたが、ETCシステムは「カードの名義人=車の所有者」と認識して課金処理を行います。

つまり、システムは「たろうくんの車が通過した」と誤認したのです。

2. 詐欺罪との関係

この事件で争点となったのは、**電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)**の成立です。

🔍電子計算機使用詐欺罪とは?
  • コンピュータに虚偽の情報を与え、誤った処理をさせて財産的利益を得る行為。
  • 例えば、ATMで他人の暗証番号を使って不正送金するようなケースが典型。

3. 裁判所の判断

裁判所は、以下のように判断しました。
  • ETCシステムは、車両情報とカード情報が一致することを前提に課金処理を行っている。
  • ぽんちゃんの車両情報は、カードの名義人であるたろうくんのものではない。
  • よって、システムは誤った課金処理を行った。
  • これは「虚偽の情報を与えて誤処理をさせた」ことにあたり、電子計算機使用詐欺罪が成立する

4. 重要なポイント

  • 名義人の同意があっても、システムを欺いた事実は変わらない。
  • 「実害がない」「善意だった」という主観は、詐欺罪の成立には影響しない。
  • 法は「システムの信頼性」を守るため、厳格な判断をする。
🧩読者の皆様への問いかけ

ぽんちゃんの行為は、あなたにとって「犯罪」に見えますか?
それとも「ちょっとした便宜」でしょうか?


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地下二階の法律研究室にて

静かな夜、地下二階の研究室

(カチ、カチ……こぱお博士が古い判例データベースを操作している)

(湯気の立つマグカップを持って登場)

博士、また深夜に判例ですか?
最近のやつですか?

(眼鏡を押し上げながら)

うむ。大阪地裁、令和7年1月14日。
ETCカードを借りて使っただけで、詐欺罪が成立したという判例じゃ。

(耳がぴくり)

えっ、それって友達にカード借りただけですよね?
それが詐欺って……ちょっと厳しくないですか?

そこだ。
君のような庶民感覚では“許可があればセーフ”と思うじゃろう。
だが、法は“システムの信頼性”を守るために動く。

(マグカップを置いて身を乗り出す)

でも、実害ないんですよね?
たろうくんも“使っていいよ”って言ってるし……

(ゆっくりと判例を読み上げる)

“ETCシステムは、車両情報とカード情報が一致することを前提に課金処理を行っている。これを欺いて通過した以上、電子計算機使用詐欺罪が成立する。”

(ぽんちゃんの顔を想像してしょんぼり)

ぽんちゃん、悪気なかったのに……

(静かに立ち上がる)

悪気がないことと、法に触れることは、別の話なのだ。
さて、君ならどう判断する?ぽんちゃんは有罪か、無罪か。

(小さくうなずきながら)

……読者にも聞いてみたいですね。
ぽんちゃんの行為、あなたならどう思いますか?

もふん補佐官の心からのひとこと

(こぱお博士が判例の結論を読み上げたあと、研究室に静寂が訪れる)

もふん補佐官(ぽんちゃんの写真を見つめながら、ぽつりと)
「法律って、時々すごく冷たく感じますね……。ぽんちゃんは、誰かを傷つけたわけじゃない。ただ、ちょっと便利にしたかっただけで。」

(こぱお博士は黙って聞いている)

もふん補佐官(続けて)
「でも、だからこそ思うんです。
法律が冷たく見えるときこそ、私たちが“人の気持ち”を忘れないようにしなきゃって。
ぽんちゃんの行為が違法だったとしても、そこに悪意がなかったこと、誰かの信頼の中で動いていたこと……
それを見つめる目は、法律とは別に、私たちの中にあっていいと思うんです。」

(こぱお博士は静かにうなずき、研究室の時計が深夜0時を告げる)

もふん補佐官(読者に向かって)
「あなたなら、ぽんちゃんをどう見ますか?
法律の目と、人の目。どちらも大切にできる世界であってほしいですね。


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