「波の音が聞こえる部屋で、私は何を守ってきたのか」
神奈川県・藤沢市。
江ノ島が遠くに見えるマンションの一室。
午後3時、陽射しがカーテン越しに差し込む中、千佳(ちか)は洗濯物を畳んでいた。

「この部屋、売るって言われたら…娘はどう思うだろう」
夫・亮介(りょうすけ)が出ていったのは、もう3年前。
離婚は成立したが、マンションの名義は共有のまま。
亮介は退職金を受け取り、再婚の噂もある。
千佳は、保育士として働きながら娘を育ててきた。
この部屋は、娘の初めての歩み、初めての言葉、初めての涙が染み込んだ場所だった。
「私が守ってきたこの場所に、あなたの権利だけが残るの?」
その問いが、裁判所に届くまでに、3年かかった。
千佳は、娘・陽菜(ひな)の高校入学式の写真を見つめていた。
制服に身を包んだ陽菜の姿。
その笑顔の背景には、千佳が守り続けた「家」が写っていた。
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亮介から届いた一通の通知書。
「マンションの持分を売却したい。協議に応じてほしい」
千佳は、弁護士に相談した。

「この部屋は、私と娘の生活の場です。彼が出ていった後も、私がローンを払い続けてきました」
弁護士は頷いた。
「財産分与の対象として、マンションの持分をどう扱うか。そして、扶養的財産分与として居住権をどう守るか。判例があります」
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【判例解説】名古屋高裁平成21年5月28日判決

この判例は、離婚後の居住権と財産分与をめぐる実務的な判断が示された重要な事例です。
千佳のケースと重なる部分が多く、以下のポイントが注目されます。
離婚原因の認定
- 夫の不貞行為と悪意の遺棄が認定され、離婚請求が認容。
- ラブホテルの割引券などが証拠として採用され、民法770条1項1号・2号・5号に該当。
財産分与の基準
- 清算的財産分与は「別居時点の財産」を基準に算定。
- 退職金・確定拠出年金も対象に含まれる。
扶養的財産分与
- 妻が居住するマンションの夫持分について、娘の高校卒業まで月額賃料を支払う形で使用を認めた。
- 妻の生活保障と子の養育環境を重視した判断。
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行研:地下二階中庭

(コーヒー片手に登場)
博士、さっきの判例、ちょっと感動しました。
マンションの持分を“貸す”っていう形で居住権を守るなんて、柔らかい判断ですね
(中庭でひなたぼっこ中)
うむ、あれはなかなか味のある判例じゃ。
法律は冷たく見えるが、こうして“暮らし”に寄り添う判断もあるのじゃよ
退職金の話も驚きました。
まだ受け取ってないのに、分ける対象になるんですね
そうじゃ。
退職金も確定拠出年金も、婚姻中に形成された財産と見なされる。
たとえ将来の話でも、“一緒に築いたもの”という視点が大事なのじゃ
(うなずきながら)
なるほど…。
じゃあ、別居してから何年も経っていたら、その間に増えた財産は分けなくていいってことになるんですか?
その通りじゃ。
判例では、別居時点を“財産分与の基準”とした。
つまり、夫婦関係が実質的に終わった時点で、財産も切り分けるという考え方じゃな
(ちょっと笑いながら)
法律って、やっぱり奥深いですね。
マンションの話も、ただの不動産じゃなくて、“生活の舞台”って感じがして…千佳さんの気持ち、わかる気がします
(湯呑みを手にしながら)
ほむ。
判例というものは、単なる法的判断ではない。
人の人生が詰まっておる。だからこそ、こうして丁寧に読み解く価値があるのじゃ
【こぱお博士の見解】
「この判例は、単なる財産分与の話ではないのじゃ。
夫婦が別れたあと、どちらが“何を守ってきたか”――その暮らしの重みを、法がどう受け止めるかという問いでもあるのじゃよ」
「退職金や年金のような“まだ手にしていない財産”も、婚姻中に積み上げたものならば、分けるべきだという考え方。これは、共同生活の本質を見つめた判断じゃ。
一緒に暮らし、一緒に働き、一緒に子を育てた――その積み重ねが、将来の財産を形づくるのじゃからな」
「そして、マンションの持分を“貸す”という形で妻と子の居住を保障した点。これは、扶養的財産分与の柔軟な運用であり、生活の安定と子の福祉を両立させた、実務的で人間味ある判断じゃ。
法は冷たいようでいて、こうした場面では“暮らしの声”に耳を傾けるのじゃよ」
「わしは、この判例に“生活の尊厳を守る知恵”を見たのじゃ。
財産を分けるという行為の奥には、人生をどう振り返り、どう未来へつなぐかという哲学がある。
それを忘れてはならんのじゃ」
【もふん補佐官の見解】
「この判例を読んで、まず思ったのは――“千佳さんみたいな方、ほんとうに多い”ってことです。
離婚は成立しても、財産分与が終わっていない。マンションの名義が共有のまま。ローンは片方が払い続けている。そんな状況、現場では珍しくありません」
「退職金や年金の分与って、相談者の方からすると“まだもらってないのに、なんで?”って疑問が出るんです。
でも、婚姻中に積み上げたものだと説明すると、少しずつ納得される。この判例は、その説明にすごく力をくれると思います」
「あと、マンションの居住権を“貸す”っていう形で守った点。これは、実務的にもありがたい判断です。
売却や名義変更が難しいケースでも、こういう柔軟な方法があるんだって、相談者に伝えられる。
“今すぐ出ていかなくていいんですね”って、ほっとされる方も多いです」
「法律って、確かに冷たく見えることもあります。でも、こういう判例を見ると、“暮らしの現場”にちゃんと目を向けてくれてるんだなって思えます。
千佳さんのように、静かに、でも必死に生活を守ってきた人に、法が寄り添う。
それが、私たち実務家にとっても、すごく励みになるんです」
【読者の皆様への問いかけ】
あなたなら、別居した時点の財産をどう分けますか?
退職金や年金、マンションの持分…それらは「未来のもの」か「過去の積み重ね」か。
そして、家を守ってきた人に、どんな権利が残されるべきでしょうか?
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