日曜日の午後、佳奈は静かに離婚届を封筒に入れた。
駅前の司法書士事務所から届いた青い封筒と、元夫の淡白なLINEの「了解です」という文字が、二度と元には戻らない現実を突きつける。
彼女は10年住んだアパートの鍵を机に置き、最後の荷造りを終えて玄関を閉めた。
冷蔵庫の磁石に貼られていた子どもの保育園のおたより、年に一度しか開かれなかった家族用の共通口座のキャッシュカード、それらはもう“元の生活”に属するものだった。
海沿いのバス停で、佳奈は息をつくようにスマホを開いた。
【財産分与:300万円】という通知が弁護士から届いていた。
彼女は指でなぞるように確認した。
「これで終わりなんだよね…」

ふと、目の奥が熱くなる。
涙ではなかった。
悔しさでもない。
むしろ、自分の感情がどうなっているのか分からないことへの戸惑いだった。
あれだけ不貞が続いていたのに。
言葉の暴力で何度も夜が眠れなくなったのに。
彼が「財産は半分渡すよ」と言ってきたその瞬間、なぜか佳奈は慰謝料のことを考えなかった。
300万円もらえる。
それで十分じゃないか。
裁判にならないで済んだのだから。
だけど、心の奥には、何かがぽっかり抜け落ちていた。
数日後、佳奈は友人に言われて初めて気づく。
「財産分与と慰謝料って、別々に請求できるんだよ。知らなかったの?」
その言葉に、彼女は固まった。
「え…じゃあ、慰謝料は?」
友人が言う。「それは、請求してないなら…もらえない」
その瞬間、佳奈は自分が“清算”だけして、“償い”を求めていなかったことに気づいた。
佳奈の気づきは、静かだけど深い波紋を呼んだ。
彼女が「償い」を求めなかったという事実は、ただの個人的な判断ではなく、実は法律的な視点から見ても見逃してはいけない重要なポイントだった。
ここで、法の世界に目を向けてみよう。
佳奈のように「財産分与で気持ちも清算された」と思い込む人は少なくない。
しかし、最高裁判所はそうは見ていないのだ。
「慰謝料は財産分与に含まれない」──昭和53年2月21日判決の教え

この問題に真正面から答えたのが、昭和53年2月21日最高裁判例だ。
この判例では、離婚をめぐって財産分与と慰謝料の両方が争われた。
争点は、「財産分与の金額を決める際に、不貞や暴力などによる慰謝料(精神的損害)を含めても良いか?」という点だった。
最高裁の判決

「財産分与の額の決定において、慰謝料の考慮は許されない」
─ 昭和53年2月21日判決(最高裁)
これはつまり、慰謝料は別枠で請求しなければならないということ。
財産分与=生活の協力や共有財産の清算
慰謝料=不法行為による心の損害への賠償
この2つは、似て非なるものであり、「一括で済ませる」という発想は危険なのだ。
【こぱおの法律研究室】〜財産分与と慰謝料の“2つのレジ”~

🧪こぱお博士(白衣・眼鏡・やや熱血)
🐾もふん補佐官(ふわふわ系・語尾ゆるめ)
🔔研究室チャイムが鳴る。
🧪こぱお博士:
「さて本日は、離婚に関する“お金の分け方”について研究だ。テーマは…財産分与と慰謝料!これはだいぶ違うぞ、もふん氏!」
🐾もふん補佐官:
「ええ〜、どっちも離婚でもらえるお金じゃないの〜?レジはひとつじゃないもふ?」
🧪こぱお博士:
「違う!まったく違う!財産分与は、婚姻中に築いた財産の精算。慰謝料は、不法行為による心の損害への賠償…つまり“お弁当のおかず”と“転んだ時の絆創膏”くらい別物なのだ!」
🐾もふん補佐官:
「ええ〜…お弁当はおいしいけど、ケガはいたい…つまり、清算と償いってこと…?むずかしい〜」
🧪こぱお博士:
「よくぞ言った!実際に最高裁もこう判示している。昭和53年2月21日判決──」
📖(こぱお博士、黒板に書きながら熱弁)
『財産分与の額の決定において、慰謝料の考慮は許されない』
🧪こぱお博士:
「つまり、財産分与に慰謝料を混ぜてしまうと、あとから請求できなくなる可能性があるんだ。混ぜるな危険!」
🐾もふん補佐官:
「それって…知らない人は損しちゃうもふ…。お財布がひとつって思ってると、手当も取りこぼすかも〜💦」
🧪こぱお博士:
「まさにその通り。法律のレジは2つ。財産分与の伝票と、慰謝料のレシートは、それぞれ別で発行しておくべきなのだ!」
🐾もふん補佐官:
「うぅ〜…離婚ってさびしいけど、ちゃんと“分けて”考えれば、自分の心もお財布も守れるんだね…!がんばれ佳奈さん…!」
🧪こぱお博士:
「では最後にまとめるぞっ!」
📌研究室まとめ
- 財産分与=共有財産の清算(民法768条)
- 慰謝料=精神的損害への賠償(民法709条)
- 混ぜて請求すると損をする可能性あり
- 請求は別々に、根拠と証拠も分けて整理する!
【こぱお博士の法的アドバイス】~“清算”と“償い”を分ける勇気~
離婚は、過去を「片づける」行為だけど、心の損害は“仕舞う”だけでは癒せない。
だから法律は、2つの請求を認めているのだ!
アドバイス①:「財産分与=生活の“清算”と心得よ」
- 民法768条に基づき、婚姻中に築いた共有財産は、公平に分けるのが原則。
- 協力して稼いだもの、共有で使っていたものは、きっちり清算するのが筋。
- 家計簿も記録も、証拠になるから残しておこう!
アドバイス②:「慰謝料=心への“償い”を忘れるな」
- 民法709条(不法行為)が根拠。「悪いことをされたら、償ってもらう」ための制度。
- “感情面は財産分与に含まれる”は大きな誤解!含めると損するぞ!
- 不貞・暴力・モラハラなど、精神的な損害には慰謝料が請求可能。
アドバイス③:「レジは2つ!混ぜるな危険」
- 財産分与と慰謝料を一緒に請求するのはOK、でも合算や混同はNG!
- 最高裁昭和53年判例で明言:「慰謝料は財産分与に含めるべきではない」
💡 言い換えれば、離婚の会計には「生活費レジ」と「心のけがレジ」の2台があるってことなのだ!
🐾もふん補佐官からも補足!
心を守るには、ちゃんと気づいてあげなきゃだめもふぅ〜。
慰謝料は「気づく勇気」と「請求する自尊心」もふ🌸
🐾【もふん補佐官の見解】~心のお手当は、べつの棚から~
離婚ってね、心の中がごちゃごちゃになる大イベントなの…。
だからこそ、ちゃんと分けて考えるって、とっても大事もふ〜。
🐾もふんのやさしい指摘
- 財産分与は、これまでがんばって積み上げた“生活の箱”をきれいに分けること。
- 慰謝料は、傷ついた心にそっと貼る“ばんそうこう”みたいなもの。
- 両方ともお金の話だけど、もらう意味はぜんぜん違うもふ〜。
💡もふんの気づきアドバイス
- 「もらえるだけでありがたい」って思っちゃうの、すっごく分かる…。
でも、心の痛みを見過ごしちゃうと、自分が消えちゃうかもしれない。 - 悔しかったこと、悲しかったこと。
ちゃんと記録して、ちゃんと伝えてもいいもふよ〜。
🌸もふんならこうまとめる
離婚して悲しいのは、きっと相手との関係だけじゃなくて、自分の気持ちが大切にされなかったこと。
財産分与は“生活の精算”、慰謝料は“心の整理”。
ふたつとも、あなたが前に進むためのステップもふ〜。
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