「え?ここ、俺がずっと掃除してたのに…?」
甲は戸惑っていた。
小さな通路――誰も気に留めないその場所を、彼は20年以上使い続けていた。
通勤も、買い物も、日々の生活の一部だった。

ある日、見知らぬ隣人・乙がやってきて、こう言い放った。
「ここ、うちの土地なんで、通るのやめてもらえますか?」

甲の頭をよぎったのは「いや、ここはもう俺のもんだろ?」という怒りと困惑。
実際、草むしりも手入れもしてきた。
なのに“登記がない”だけで退去を迫られる――。
この何気ないやり取りが、**民法177条「第三者」**をめぐる重要な判例へと繋がっていく。
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「“その譲渡、信じられるか!?”未来の登記争いと背信的悪意者からの転得者の影」
時効取得とは何か?
甲が頼ったのは「時効取得」という概念だ。
法律では、一定の期間、平穏かつ公然に他人の土地を占有すれば、その所有権を取得できる。
時効取得の条件比較表(民法162条)
比較項目 | 10年取得(短期時効) | 20年取得(長期時効) |
---|---|---|
占有者の要件 | 善意かつ無過失 | 意思や過失に関係なくOK |
取得期間 | 10年(短期) | 20年(長期) |
典型事例 | 事情を知らずに購入した場合など | 境界が曖昧で無断で使用していた場合など |
信義性の評価 | 高い(法律上の保護が強い) | 低くても取得可能だが評価は分かれる |
甲の状況(通路使用) | 善意・無過失が立証できれば該当可能 | 長期使用ならこちらに該当の可能性大 |
判例上の判断傾向 | 取得成立が厳格(主観的要件あり) | 客観的事実が重視されやすい |
[1990年] 通路利用開始
↓
[1995年] 草むしり習慣化
↓
[2000年] 通行人に「あそこの通路は甲さんのよね」と言われる
↓
[2005年] 乙登場
甲の場合は、所有者の承諾なしに通路を使い続けていた。
草むしりや清掃を自発的に行い、周囲にも「ここは俺のだ」と思わせるほどだった。
果たして、この“長年の支配”は法的に所有権となるのか
乙の登記と主張
乙が土地を購入したのは最近だった。
彼は所有権を得て登記も済ませ、「正式な所有者」として甲に使用の中止を要求した。
「不動産に関する物権の取得は、登記がなければ第三者に対抗することができない」
つまり、登記している乙が“第三者”である限り、甲の時効取得は乙に対抗できない。
ここが争点になる。
背信的悪意者とは?
では、「悪意がある第三者」の場合はどうだろうか?
この判例で乙は、「通路が甲に使われていたことを知りながら購入した」つまり**“悪意”があった**とされる。
ただし判例はこうも言う

「単に悪意があるだけでは足りず、登記による主張が信義則に反する“背信的悪意者”であることが必要」
悪意者と背信的悪意者の違い
比較項目 | 悪意者 | 背信的悪意者 |
---|---|---|
概要 | 権利侵害の認識だけで足りる | 信義則違反の積極的行動あり |
要件 | 第三者の権利を認識済み | 信頼を裏切る背信性が認められる |
典型事例 | 当事者の事情を知る無関係の者 | 真の所有者から事情を聞いた買主 |
乙の行動は、知っていながらあえて登記で権利を主張し、甲の長年の通路使用を断ち切るものだった。裁判所はこれを「背信的」と評価した。
判例の結論とその意味

最高裁は、乙の登記に対してこう判示した
「登記を有する者であっても、その取得の経緯が信義則に違反する場合には、民法177条の第三者に該当しない」
つまり、乙は“登記があるから強い”わけではなく、“その登記の行使方法”によって評価が変わる。
これは「登記>時効」ではなく、「信義>登記」になり得る例であり、法のバランス感覚を示す重要なポイントだ。
まとめ:この判例が問いかけること
「法は冷たいか、それとも温かいか?」
甲のような生活者と、乙のような形式主義の登記主張者。
その間で裁判所が導いた答えは、“過去を見据えた現在の正義”だった。
この判例は、単なる所有権争いではない。
「信義とは何か?」「法が守るべきは何か?」を私たちに問いかける物語だ。
こぱおの法律研究室:今日のテーマ「背信的悪意者ってなんだ?


「さて、もふん補佐官。今日は“悪意者”と“背信的悪意者”の違いについて研究するぞぃ」

「はいっ博士!でも…えっと、“悪意者”って悪いことする人ってことですか?こわいもふ…🥺」

「まぁ、単に他人の権利を知ってて侵害する人のことだ。こわいけど、法的には“知ってた”だけで十分なのだよ」

「じゃあ、“背信的悪意者”ってもっとこわいもふか…?信じてたのに裏切る感じ?」

「その通り!“信義則”を破るような行動をした人だ。たとえば、本当の所有者から事情を聞いておきながら、あえて買い取るようなケースだな」

「ひぇぇ…それって、モフ界では“毛信違反”です!(※勝手に制定)」

「法律界でも相当な非難を受けるぞ。
この違いを理解しておくと、民法の背骨が見えてくるのだ!」

「背骨はモフモフに包んでおきたいもふ…でも、ブログ読者には分かりやすく伝えますっ!」
こぱお博士の見解
「法律はルールじゃが、信義則は“心の軸”なのだ。」
― こぱお博士、民法の奥深さを語る
見解の深掘り
- 信義則は、目に見えぬ契約の“余白”を埋める。
→ 法律では書ききれない人間関係の“あいまいさ”に、秩序を与える役割があるのだ。 - 「言ってないけど、わかってたでしょ?」を補強する力。
→ 取引や関係性における暗黙の了解や常識に正義を宿すのが、信義則の妙なのだ。 - ルールよりも“裏切り”に敏感な法的センサー。
→ 規則を守っていても、相手を欺く行為には制裁が下る。それが信義則の“刃”なのだ。
もふん補佐官の見解::背信的悪意者とは?
「知ってて“知らないふり”するのって…モフ界では一番の裏切りですぅ。」
― もふん補佐官、信頼を裏切る行為に涙の抗議!
🌸 やさしい法解釈 by もふん
- ただの“悪意”だけじゃダメなんですぅ
→ 登記した第三者が「知ってた」だけじゃなく、それが“信義に反する”状況でなきゃ、背信にはならないんですぅ。 - “知らないふり”が、信頼を壊すんですぅ…
→ 相手が権利を持ってるって知ってたのに、それを無視して登記を優先するのは“背信”ってことになるんですよぉ。 - 背信的悪意者=信頼関係をモフッと踏み潰す存在ですぅ
→ 法的には保護されない…モフ界では「モフ権はく奪」レベルの重罪ですぅ!
🧸 もふんのもふもふ考察
「うっかりじゃなくて、わかっててやったって…それってモフの心を壊す行為ですぅ。法律も、もふもふも、それには厳しいですぅ。」
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